辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

 王太子夫妻の結婚式は一日目は結婚式と晩餐会が、二日目と三日目は舞踏会が行われ、三日三晩お祝いが続く。一日目は新婦であるエレナは純白のウエディングドレス、二日目は贅を凝らした豪華なドレス、三日目は通常のドレス──と言っても、王族に相応しいとても高価なものだが──を身に着ける。その三日目のドレスをサリーシャとお揃いで、という申し出だ。

 これは、本当に名誉なことで、単に贈られるドレスの価値が高いというだけの問題ではない。
 通常、王族の一員となる王太子妃エレナと、同じ舞踏会で同じデザインのドレスを着るなど、絶対に許されない。もし無断でそんなことを行えば大変な不敬にあたり、貴族社会から追放されかねないほどの大問題になる。
 しかし、王族が身に付ければ、そのドレスは即ち流行の最先端となる。だから全ての貴族の女性は王族の女性が何を着るのかに高いアンテナを張り、出来るだけ似て非なるものを身に付けようと画策する。
 逆に言えば、同じドレスが許されるということは、王太子夫妻から並々ならぬ信頼と寵愛を得ているということを全ての貴族に知らしめることになるのだ。

 フィリップ殿下とエレナの婚約期間は一年間だ。結婚式はすでに四ヶ月後に迫っている。来月行われるサリーシャとセシリオの結婚式の三ヶ月後にあたる。今から用意すれば、ちょうどいい具合に素晴らしいドレスが完成することだろう。
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