辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「はい。おやすみなさいませ、閣下」

 サリーシャは小さくお辞儀をする。
 パタンと閉じたドアの向こうから、遠ざかる足音が聞こえた。

 ノーラ以外の誰かから『おやすみ』と微笑まれたのは何年振りのことだろう。触れられた頬に重ねるように右手を被せると、サリーシャは閉じたドアにもたれ掛かかって天を仰いだ。


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