政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 誰かに恋をして、その相手も自分を好きになってくれる。恋人になって結婚して夫婦になって生涯ともに過ごしていく。

 それがどれほど奇跡なのか、痛いほど身に染みる。誰かに力いっぱい掴まれているかのように胸が苦しい。

 私には彼女にかける言葉はなく、ただ泣き続ける神屋敷さんを眺める中、航君がゆっくりと彼女に近づいた。

 一メートルほど離れたところで足を止めて、目線を合わせるように屈む。そして顔を上げた神屋敷さんに優しい声色で言った。

「俺は神屋敷が思っているほどいい男じゃない。……どうか心から愛し、愛される相手を見つけて幸せになってほしい」

「航さん……」

航君の話を聞き、神屋敷さんの涙はとめどなく溢れる。

「そんな優しい言葉をかけられたら、ますます諦められなくなりますよ。……私、航さんと結婚するためにすごく努力をしたんですよ? 隣に立っても恥ずかしくないように美容に気を遣い、様々なことを学びました」

「それはきっと、キミの財産になる。これから先いくらでも生かせることだ」

「でもっ……!」

 手を伸ばした神屋敷さんに触れられるより先に、航君は勢いよく立ち上がった。
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