政略懐妊~赤ちゃんを宿す、エリート御曹司の甘く淫らな愛し方~
 結婚してくれることに頭を下げて感謝しなくてはいけないのは、むしろ私のほうだと思う。

 庵野さんは速やかに父が残した借金を返済し、そして瑠璃の体調が落ち着き次第、渡米できるように手配をしてくれた。

 主治医からもできるだけ早くいったほうがいい、二週間後にでも発つのはどうかと話を受けた。
 本当に庵野さんには、感謝してもしきれない恩ができた。その恩を返す唯一の方法が彼と結婚して子供を産むことなら、私は喜んで受け入れようと思っている。

 それにやっぱり庵野さんは、悪い人じゃないから。

 忙しい人なのに頻繁に連絡をくれる。メッセージは苦手なようで、朝と夜に必ず電話がかかってくる。

 話すのはほんの数分間で、些細なことだけ。その日の予定や出来事を聞かれ、そしてなにか困ったことがなかったかも聞いてくる。

 一昨日の夜は、伯父と伯母への手土産はなにがいいのかと頭を悩ませていて、私がどんなものでもいいと言っても、「そうはいかない」と一蹴され、昨日は数時間かけて手土産を買いに行ってきたそうだ。

 伯父と伯母は和菓子が好きだと伝えたところ、老舗和菓子店の羊羹や大福を持参し、それを見た伯母は、滅多に食べられない品に喜んでいた。
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