無彩色なキミに恋をして。

一部始終を聞き終えたわたしは
扉から離れるように後ずさりするも
頭の中で『どうしてわざわざ口止めなんて…』って
グルグルとその事ばかりが駆け巡る。


父との会話は
わたしに知られたらマズイこと?

まずいって、なに?
会う相手とわたしが関係しているから?
だとしたら、その人って誰?



自問自答を繰り返している間に扉がゆっくりと開いていき、この場から離れるのも隠れるタイミングも失ったわたしは、部屋から出てきた燈冴くんとバッタリ遭遇。


目が合ったまま
まさに”だるまさんが転んだ”状態。


わたしを見るなり立ちすくんだまま
何か言いたそうに口を開けて硬直する燈冴くんが
たぶん今誰よりも驚いていると思う。

それもそうだよね。
よりによって知られたくない”内緒にしといてほしい相手“に盗み聞きされたんだから。

想定外の出来事に心底困り果てた様子で『まさか聞かれていたとは…』と呟くと、彼は右手で髪をクシャと掴むように頭を抑えた。
そんな姿を見ると…ズキンと胸が痛む。

「燈冴くん…ごめーー」

「緋奈星さま、少し宜しいでしょうか」

謝る前よりも先に『場所を変えましょう』と遮られ
すれ違うようにわたしの横を通り過ぎていく燈冴くんの目つきが、なんとなく少し怖い。
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