無彩色なキミに恋をして。

「鮎沢さんところは特別なお得意様で何かと世話になっているんだが、そこで緋奈星より4つ上のご子息の話になり、今後の関係として顔合わせをした上で両方の意思が固まれば婚約を、と考えている」

「なに…それ…」

あまりに身勝手すぎる理由に言葉が出ず
頭が真っ白になった。

取引先の息子がいれば婚約するのが一般ルールなの?
それなら当人達の気持ちは?

「何が目的なの?」

「悪意ある言い方をするな。
 お見合いだと考えれば良い話だ」

「お見合いって…
 何を考えているの?」

意味がわからない。
『両家の子供をくっつけちゃおう!』みたいな悪ノリだけじゃないはず。

「芹斗くんからは前向きな返事を貰っている。
 緋奈星も真面目に考えなさい」

そんな話、納得出来ない。

「…嫌。」

「なんだと?」

「いくらお父さんの言いつけでも
 勝手に決められたくはない」

これはわたしの人生だから。

「誰を好きになるのも
 誰と将来一緒になるのも
 決めるのは自分自身。
 わたしの未来を縛り付けないでッ!」

「緋奈星!」

一方的に気持ちをぶつけ
父の制止を振り切って社長室を出て行くと
腕を組み廊下の壁に寄り掛かる鮎沢芹斗さんが待ち構えていた。


まさか聞かれてた?
それでもいい。
嘘は1つも言ってないんだから。


 

 
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