冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

驚きすぎてソファから腰を上げ、「は?」というどす黒い声が出た。
『芽衣さん〝も〟』というのがものすごく引っ掛かったが、今はそこを気にしている余裕はない。

「なんのことだ」

『ほら、これです』

見せられたのは、カフェの制服姿の芽衣が男に引き寄せられ、キスをしているかのような写真。

「……桐生」

男の方が誰だか、髪のシルエットですぐにわかった。

腹の中がドロドロになるまで煮詰められたような、不快な感覚が沸き上がってくる。

俺と結婚しているのになぜだ。結婚すれば俺のものになると思っていたのに。

俺が幸せにするのに──。

『……ご主人。泣かないでくださいよ』

泣いていない。涙は出ていなかった。
涙が出ていないのに泣いていると判断するなんて、ジータはやはり壊れているのだろうか。


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