冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

「現在わが社が商談を進めている重要取引先の社長が、こういった付き合い方を嫌うと有名な愛妻家なんです。見境がないと思われたら非常にまずい」

「は、はあ」

「だから婚約者だと紹介しました。繰り返しますが、事後報告になったことは反省しています」

反省しているように見えないんですけど……。だいたい事後報告すればいいという話ではなく、とんでもない嘘をついたのだという自覚がないようだ。

自分の都合だけで相手の気持ちまで考えが及んでいない。たしかにこういうところは、血が通っていない冷徹さが垣間見える。

でも、とりあえず謎はひとつ解決した。

「撮られた相手を婚約者にしなければならない理由はわかりました。でも、どうして私なんですか?」

「どうして、とは? 俺と撮られたのは三澄さんです」

「それはそうですけど……。もっとほかに適任な女性は山ほどいるでしょう? 私みたいなのじゃなくてそういう人に結婚をお願いした方がいいと思うんですが」

瀬川さんはティーカップを置き、本気でわからないと言いたげに眉根を寄せ、かすかに首をかしげた。
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