冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

彼は涼しい顔で答えた。

「そんなこと、俺には判断のしようがありません。三澄さんのパンケーキを食べたことがありませんから」

そうだよ。そうなんだよ。皆、私が作るパンケーキを食べたこともないのに無理だって言ったの。

「飲食店の流行は移り変わり、経済状況によって売れる価格帯は上下します。なにかの機会で三澄さんの能力が格段に伸びたり、偶然に支援者と出会い資金を得られる可能性もあります」

「……はい」

「少なくとも三澄さんが夢に対し努力をし続ける限りは、可能性は常にあるものだと思いますが」

場がシンと静まった。店長も、響子さんも黙り込んでいる。しばらくして響子さんがぐすっと鼻を鳴らして涙ぐみ、店長が「響子」と優しげな声をかける。
まるで『くりぃむの森』を立ち上げた歴史を思い返しているようだった。

どうしよう。こんなことを言われて私も泣いてしまいそうだ。
冷たく突き放されてきた夢に挑戦してもいいのだと、初めて肯定してもらえた。
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