冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

質問で返されるとは予想していなかった私は、自分でも「打ち合わせってなんだろう」と問い直してみる。

「ほら、両親への挨拶とか。なんて説明したらいいか決めておかないと」

彼は透き通るような目を私に向けながら、

「なぜ両親へ許可を取る必要が?」

と首をかしげる。
彼の瞳に写っている私は、困惑を通り越して混乱している。

「許可というか、一度会って顔見せする必要はありますよね? お互いの両親に」

「こちらは存命なのは父だけで、反対することはないから問題ない。芽衣の両親へも事後報告ではダメなのか。今日は婚姻届を出しにいくつもりだったんだが」

「ええ!?」

ソファの上でお尻ごと飛び上がった。
突っ込みどころはいろいろあるが、今日が結婚記念日になる予定だなんて初耳だ。

そばで白く硬い円柱状のボディにヒラヒラのエプロンを着けて立っているジータに、彼は顎で合図をする。

ジータは窓際の華奢なデスクに向かい、薄い引き出しに入った紙を一枚、二本指で掴んで持ってきた。
それは間違いなく婚姻届だ。しかも、証人の欄にすでに知らない名前が二名書き込まれている。

< 54 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop