思っていたのと 違うのですか‼︎


 旦那様に近寄ると、
着物の彼女の横に、見ただけで女将だとわかる貫禄がある女性が立っていた。

「本日は遠い所からお越し頂きありがとうございます」

深々と頭を上げると、

「智君にお連れ様を連れていらっしゃるとお伺いしておりましたが、こんな可愛らしい方だなんて」

ふふふと笑いながら、旦那様に微笑む。

初めにきた着物の彼女よりこちらの方が危険な匂いがします。

 それは着物の彼女も感知したのか、旦那様の腕を抱きつきながら

「お食事はいつも通り奥で食べるでしょう!」

と玄関へ歩き出そうとする。

敵前逃亡でしょうか。

それにしても、いつも通りですって。
この子なかなかやりますね。

私を完全無視しています。
恋敵にはいいけど(よくないが)、客に対してはどうなんだろうか?

女将さんの顔をそっと見てみる。

怖い。怒り狂う嫉妬の目。

 ではなく、上に立つ者として絶対にやってはいけない事をした下の者を見る目だ。

絶対に後で怒られるな、着物の彼女。

 
自分の立場よりも本能が勝るのは、若さか性格か?

おもしろい。

< 32 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop