思っていたのと 違うのですか‼︎


資料室に立ち寄りデスクに戻る。

扉の前に1人の女性が立っていた。

真面目そうで、自分に自信がないのか、俯いている。見かけない女性だった。

釣れたかな。雑魚でなければいいが。


「お疲れ様です。何かありましたか?」
「先程、葉山さんが探していたデータです」

USBを差し出す。

「中身を確認させて下さいね」

立ち去ろうとした彼女を呼び止める。

なるべく優しく穏和に。

「扉は開けておいて下さい」

USBの中身を確認しながら

「女性がいる時は、開けておくんです。コンプライアンスの問題なので、気分を害したら申し訳ない」

微笑んでみる。

「はい」「いいえ」「大丈夫です」

それしか反応が返ってこなかった。

仕事としてはそれが正解なのだが。

 浮き足を立てない女性が目の前にいる事の驚いている自分に驚く。

私もこの世界に染まってきたという事か。


渡されたデータを見ながら苦笑いをする。

それにしてもよくまとめられている。

「これは坂本さんがまとめたの?」

突然名前を呼ばれ、初めて表情を崩した。

私は自分の胸元を軽く指で叩く。

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