貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情
なんて素敵な結婚事情
ジェシカとフェルナンが婚約して、三カ月経った。
二人は今、半年後に控える結婚式の準備で忙しい日々を過ごしている。
貴族の結婚にしてはいささかスピーディーなスケジュールは、もちろんフェルナンが一刻も早くジェシカと一緒になりたいと画策したのもあるが、当人らの知らないところで国王陛下が直々に動いた結果でもある。

「フェ、フェルナン様。どうでしょうか?」

奥の間からはにかみながら出てきたのは、純白のウエディングドレスに身を包んだジェシカだった。この日二人は、結婚式で着る衣装の打ち合わせに訪れていた。
ジェシカが姿を現した途端にさっと立ち上がったフェルナンは、足早に近づき、そっと彼女の手を取った。

「ああ、なんて美しいんだ」

最愛の人からの賛美に、ジェシカは頬を赤らめた。
婚約者のひいき目抜きにしても、純白のドレスを身に纏ったジェシカはまばゆいほど美しかった。
もとより、夜会に出席すれば異性の視線を集めてしまうほど整った容姿のジェシカだ。それがフェルナンと出会い、息つく暇もないほど愛され、その美しさはまるでつぼみが花開くように輝いていった。

「どうですか? このデザインでしたら、奥様のスタイルの良さも際立って、とても素敵だと思いますよ」

ここは王都で人気の、王族ご用達の仕立て屋だ。今対応するのはこの店の女店主。騎士団長の婚儀とあらば下の者に任せるわけにはいかないと、自ら対う応を申し出ていた。
二人の仲はもはや貴族中に周知されており、店主も無意識のうちに〝奥様〟と言ってしまう。それに気付いたフェルナンは大変満足していたが、他に思うところのあるジェシカはそれどころではない。

「ああ、すごくいい。だが……」

確かに満足そうにしていたフェルナンだったが、ジェシカの首元をちらりと見てわずかに表情を曇らせた。

(まただわ。フェルナン様は一体何が気に入らないのかしら?)
実は、衣装の打ち合わせに来るのはこれで二度目だ。本番でジェシカが纏うのは、オーダーメイドの予定だが、一度着てみた方がイメージもわくだろうと試着していた。
着てみせるたびにフェルナンは一言目にジェシカへの賛辞を述べた。しかし、〝だが……〟とすぐに表情を曇らせてしまってばかり。理由を話してはくれない。それがジェシカを不安にさせていた。


「いらっしゃいませ、ロジアン様」

ジェシカがウエディングドレスを試着していると、店先で来客をもてなす声が聞こえてきた。

「ロジアン様?」
「ええ。そうみたいですね」

友人の名前に反応したジェシカは〝挨拶をしなきゃ〟と、フェルナンが制するより素早く身をひるがえし、店先へ向かってしまった。一応、高価なドレスを身にまとっているという自覚はあったようで、いつもよりはおとなしめに早歩きをしている。
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