朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
「あ、もう返って来た。
………チッ、そう来たか……」

「なに? どうしたの?」

見せられた真からの返信には、小倉バタートーストの写真が。いい具合にこんがり焼けていて、たっぷりの小倉あんにたっぷりのバターが少し溶けて絶妙な感じに映えている。

これは甘いものに目がない京には堪らないだろう。

全く、何を競い合ってるんだか。

「はいはい。もういいから、早く食べよう」

「はーい。いっただきまーす!」

弟の宣とのやり取りみたい。
でも、食べている姿は品があって、外見だけは本当の王子様みたいなんだけどな。
中身は……
お子様というか、人懐っこいタレ目のワンちゃんだ。
フォークとナイフを持って品よく食べている後ろに、パタパタと忙しなく動く尻尾が見えるようだ。

「それで話って?」

「え?……あ、そうそう。
あのね? さっき常務に呼び出されたの」

「雅伯母さん? なんて?」

「異動だって」

「異動?? 早すぎないか?
秋に異動したところだろ?」

「そうなんだけど、事情が事情なだけに……。
常務秘書の紺野さん、産休に入られるみたいなのよ」

「あぁ。そうだったな。
でも、まだ産休は先じゃなかったか?」

「うん。そうなんだけど、体調が良くないらしくてね。早めに産休に入られるのよ」

「そっか…。心配だな、それは…
それで泉に?」

「うん…」

正直、1年目でまだ先輩に聞かなければ何も出来ない身なのに、不安しかない。

「大丈夫だよ」

「…京?」

「不安なんだろう? 
泉は真面目だから、最初から完璧を目指そうとして不安なんだ。
初めてのことなんだからさ、不安で、出来ない事があっても、それは当然の事なんだよ」

「……」
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