朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
「礼服、持ってきた? 靴も」

「ちゃんと持ってるよ」

礼服だけじゃない。
念の為、スーツを一着と私服も入れてある。

「爺さん達は? 」

「父さん達は待ちきれないからと、2本早い新幹線で先に行った。
全く、ちょっとくらい待てばいいのにな。
慌ててまた腰がやられても誰も面倒みれないのに……」

父がブツブツと文句を言っている。

祖父は昨年の冬、ぎっくり腰で1ヶ月ほど寝込んでいた。もう80になるのだから大事にしてほしい気持ちはわかる。

「花ちゃんの赤ちゃんにまだ会えてなかったから、お父さんもお母さんも待ちきれなかったのよ。
東京駅からはタクシーに乗るように言ってあるから大丈夫よ」

皆んなそれぞれなんだな。

そう言えば、京も連絡があったな。
幕張でやってるブライダルフェスティバルのために、2日前から現地入りしているらしい。
あいつも正念場だな。
明日は抜け出せるのだろうか。

撫子も同じく、今日が初日だから2日前から現地入りだ。

皆んなそれぞれに役割を果たしている。

不意に寂しさと罪悪感と……劣等感が俺を襲う。
俺1人、ここに居ていいのだろうか……。

そんな思いに関係なく、新幹線は俺達を乗せて東京へ向かう。





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