愛するあなたへ〜blue roseを私にください
【波乱は再びやって来る】
怒濤の1週間が終わってから、新規案件が続けて入り、翔さんは帰りも遅く、休みの日もご飯を食べてから、夜中まで仕事をしていた。
私は仕事の邪魔をしてはいけないと思い、土曜日だけ泊まりに行くようにした。
「来てくれたらいいのに・・・」
「落ち着くまで、土曜日だけ泊まりに行きますね」
「ごめんね、なかなか時間取れなくて」
翔さんは事務所にいても、来客と従業員との会議で話す時間も無かった。

1ヶ月、そんな慌ただしい日々が続いた。

始めは仕方ないと思いながらも、土曜日に泊まっても、昼から事務所に行ったり、家に仕事を持ち込んだり、顧客と接待があったりと、目まぐるしく仕事が忙しかった。

コンサル部もいつもより慌ただしく、佐野さんも私も手伝っている。
「何件か大型案件があって、ごめんね。もうすぐ落ち着くと思うから」
社長室に行くとそう声をかけてくれる隙から、電話が掛かって来たり、コンサル部の人が相談に来たりと、翔さんを独占できる時間は減っていた。

ある木曜日に、翔さんは「外出、直帰」とホワイトボードに書いていた。
いつもだったら行き先か会う人の名前を書くか、スケジュールを共有カレンダーに入力しているのに今日は何も書いていなかった。

「今から外出ですか?」
「あぁ、取引先と打ち合わせがあってね。じゃあ、行ってくるから」
翔さんは、私と目を合わさず、慌てて出掛けていった。
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