いつかキミが消えたとしても
しかし母親はそれを止めることなく、話を聞いてくれた。


「透明になる……病気で。薬、なくて……だから、入院してっ……」


「そう。大変なのね」


母親は舞の背中をさすりながら何度も頷いてくれた。


「そう。青っちの顔……見られなくなっ……!」


そこまで言って嗚咽する。


そう、透明病の一番つらいところは、そこに本人がいるのにもう二度と顔を見ることができなくなることになるらしい。


顔も体も、なにもかもが消えてしまう。


本人は確かにそこにいるのに……。


「それなら舞は頑張らなくちゃ」


「え?」


「え? じゃないの。青木君1人にリハビリをさせるつもり?」


その言葉に舞は左右に首を振った。


そんなことさせない。


私だって手伝ってあげられることは、なんでもしてあげたい。


「それなら、今できることはなに?」


聞かれて舞は布団の上に投げ出していたスマホを見つめた。


「病気について、調べること?」


尋ねるように答えると母親は微笑んだ。


「そうね。できることからやりはじめようか」


そう言われて、舞はようやく泣き止んで頷くことができたのだった。
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