いつかキミが消えたとしても
見られている
「今日のデートはどうだったの!?」


帰宅した途端母親がリビングから出てきて勢いよく質問してきた。


舞はその勢いに圧倒されながら「まぁまぁだったよ」と、答えた。


「それよりお母さん、今日は早かったんだね」


「お昼から出勤して3時間だけよ。バイトの子の変わりだったから」


そうだったのか。


そうとわかっていればもう少し早く帰ってきたのに。


「それより、なによまぁまぁって! あの子、小学校の頃一緒だった青木君でしょう? 大きくなって、男前になったじゃない!」


「お母さん、青っちのこと覚えてるの?」


舞はリビングへ向かいながら驚いて聞き返した。


「覚えているに決まってるでしょ。あの子、泣き虫で舞がいつも助けてあげていたじゃない」


娘が気にかけていた男の子だから、しっかりと覚えていたみたいだ。


舞はリビングのテーブルに沢山のお土産を並べながら「見た目が変わったから、わからないと思ってた」と言った。


「わかるわよ。雰囲気は同じだもの」


母親はカエルのぬいぐるみを持ち上げてしげしげと見つめながらそう言った。


他にもブタやウサギのぬいぐるみもあるし、遊園地限定のお菓子もある。


「ところでこのカエルのぬいぐるみはなに? すごくブサイクだけど」


母親の一言に舞は吹き出して笑ったのだった。
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