あの日溺れた海は、
5.淡い期待
夏真っ盛りの太陽はじりじりと地面を照りつける。お昼を過ぎた平日の電車はかなり空いていて冷房がよく効いていた。


電車から駅のホームへ降り立った瞬間に吹き出る汗を手で拭いながら学校へと歩を進める。


みんなで合宿してからもう2週間も経とうとしていた。





 
「ねえ〜!合宿の写真持ってきたよ!」
 
 
 月は部室の扉を開けるなりそう叫びながら胸の前にどーんと写真屋の封筒を突き出した。
 

写真は各々のスマートフォンで撮り、トークアプリで共有したのだが、1枚だけ、部員と藤堂先生とで旅館の方に撮ってもらった写真を部員分現像しようということになった。


わたしたちは「ありがとう!」と言いながら月の机にわらわらと集まった。


月は封筒の中から写真を取り出すとそれを1枚1枚わたしたちに手渡した。


しかし写真はなぜか6枚入っており、あれ?1枚多い?と思っていると最後の一枚もわたしの前に差し出された。


「え?わたしもうもってるけど…」


月の意図が分からずそう返すと月はにっこりと笑顔を返した。


< 112 / 361 >

この作品をシェア

pagetop