あの日溺れた海は、



5時間目の体育の時間。

昼休みに体育の先生に授業に参加できないことを告げると、教室で体育の授業についてのレポートを書くように言われた。


普段なら見学をするだけのようだが、9月になったとはいえ暑さの厳しい日が続いている。そんな中1時間見学して熱中症にでもなったら困るとのことでとられた措置だったらしい。


何を書けばいいものかと内心悩みながらもレポート用紙を先生から受け取ると、独特な緊張感が漂う体育教科室を後にして、授業の準備でざわつく教室へと戻った。



昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る頃には他の生徒たちは楽しげな声を上げて運動場へと向かい、教室には男子生徒が脱ぎ散らかした制服とわたしだけになった。


本鈴が鳴るまで席について窓の外をぼーっと眺めていた。


昨日とは打って変わって青が広がる空を見つめながら、昨日の出来事を思い浮かべて心が曇り始める。


暫くすればこの恥ずかしさも忘れるだろう。それまでの辛抱だと自分の愚かさを責めるもう1人の自分に言い聞かせた。

実際、何度も言うけど、藤堂先生とは副担任なだけでそれ以外には接点がない。

授業も担当ではないしHRでは基本後ろで空気になってるし。

何日か視界に入れないようにして考えないようにすればいいだけ…

そう思っているうちに本鈴が鳴り、レポートを始めようと筆箱の中のペンを手に取った瞬間。
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