あの日溺れた海は、
8.繋がっていた過去
「ねえー、昨日なんで部活来なかったの?」
 
 
 次の日の朝、昇降口で上履きに履き替えてると後ろから話掛けられた。振り返るとそこには頬を膨らました月が立っていた。

「LINEも返してくれないしー」

「ごめん、色々あって。」
 
 なんとなく目を逸らしながらそう気まずく答えるわたしに、月はぐっと顔を近づけてジロジロと訝しげな視線を送った。
 

「色々って、なに」
 
 
「え、と…」
 

 嘘をつくこともできず、かと言って本当のことも言えずそう言い淀む。


「補習?クラスの手伝い?」


「ちがう、けど…」


一向に言おうとしないわたしに諦めがついたのか、はあ、とため息をつくと「もういいよ。また部活でね」と言って、一人で教室に行ってしまった。
 
 
 月を怒らせてしまっただろうか。でも、今はまだ勇気が出ない。遠ざかる背中に「ごめん」と小さく呟くとわたしも教室に向かった。



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