あの日溺れた海は、

 
「…っくしょい!」
 
 
大きなくしゃみの音に伏せてた顔を勢いよく上げた。
 
 
ああ、なんだ、夢か。
 
 
そして自分のくしゃみの音で起きたってわけね。
 
 
悪夢と、その後の先生との少し破廉恥な夢にどっと疲れてふう、とため息をつくと肩からはらりと何かが落ちた。


これは…スーツのジャケット?見るからに男物だ。

まさか、いや、そんな…と、密かに寄せる期待をなんとか抑えながら周りを見渡すと、机の上にそれまではなかった青の付箋が目に入った。
 
 
『起きたら部室の鍵を閉めて数学教科室まで。ジャケットも忘れずに。鍵当番の藤堂より』
 
 
いつもの見慣れた整った字にまた一つ胸が弾んで、どんどん加速していく。

ジャケットに触れている手のひらがどんどん熱を帯びていくのを感じながら、すぐに片付けて鍵を閉めた。


先生が鍵当番なら、わたしが鍵を返すまで帰れないだろう。

もちろん付箋はノートに貼りつけてこっそり持って帰った。
 
 
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