あの日溺れた海は、
──────────────────────

『華さん、調子はどう?』



『いえ、あまり』



『夢をよく見る?』



『はい。だから眠るのが怖くて、眠れなくて。』



『そうか。薬は飲んで―』



『先生、わたしはいつになったら治るのでしょうか』



『そうだな。具体的な期間を伝えることはできない。もう5年も治療しているのだから。』



『もう…5年。』



『…ただ、稀に脳に強い刺激を受けて治ったという報告もあってね。』



『脳に、刺激?』



『そう。例えば─』





< 2 / 361 >

この作品をシェア

pagetop