あの日溺れた海は、



『華さん、何か楽しそうだね。』


白髪交じりの男の人がそうニコニコと笑いながらわたしに話を振る。


『何か楽しいことでもあったのかい。』


その問いかけに、わたしは不気味は程真っ白な壁を見つめながら最近の出来事を振り返った。


「そう、ですかね。」


なんとなくわたしの答えは歯切れの悪い音となって部屋に響いた。
特に代わり映えのしない毎日に、4月は変化をたくさん与えてくれる月である。
進級して、クラス替えもあった。




でもそれ以上にわたしの生活に刺激を与えた変化をわたしは知っている。
それなのにわたしは意地になって「はいそうです」と認めたくはなかった。


そんなわたしの心を見透かしているように、男の人—芹沢先生はクスリと笑った。
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