あの日溺れた海は、

「なんかさあ。…今年も色々あったよな。」


そうしみじみと呟く彼の言葉に、「そうだね。」とだけ返した。 
 

「はなはトラウマを克服して、俺ははなにフラれて。」 
 

「そこ自分から触れちゃうんだ。」
 

「そりゃ俺にとっては大事件だったからなあ!」
 

そう冗談混じりに言ったかと思えば急に真面目な顔をして
 

「でもさ、俺たちはこれからもずっと親友だから。何かあったら頼れよ?」
 

と続けた。亮の気持ちが嬉しくて「ありがと。」と顔を綻ばせながら言った。
 

「男の気持ちは男が一番分かってるしさ。」
 

「男の気持ち?」
 

急に何を言うのかと、不思議に思って聞き返すと亮はあっけらかんとした顔で「好きなんだろ、藤堂のこと」と返した。


わたしは一気に顔を赤くして口をパクパクさせた。


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