あの日溺れた海は、

「あーあ…これ本当ひどいね。」



赤ペン先生=藤堂先生という式が成り立った次の日の放課後。
部室の机の前で一点を見つめ言葉を失って立ち尽くすわたしに、月は同情の声を掛けた。



そんな声が遠くに聞こえるほど、わたしは目の前に広がる紙切れをただ茫然と見つめていた。



ただの紙切れではない、わたしの破られた原稿用紙。



昨日、山崎さんがなぜか盗もうとしていたわたしの原稿用紙。



こう目の前に無惨な姿で残されている原稿様子を見ると目に涙が溜まった。


どうして山崎さんが?どうしてわたしの原稿用紙が?浮かんでは答えが見つからず頭の中を彷徨い続ける問いに頭が痛くなった。



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