ボトルメール
飛行機に乗ると楓はずっと窓の外を見ていた。まるで彰を病気にした、この世界を憎むように。
彰は俺に『頑張れよ』と言ったが、とてもそういう雰囲気ではなかった。
俺は静かに音楽を聴くことにした。もちろん聞くのはDear hornさんの曲だ。そういえば、この人は母の親友とか言ってたがまだ一度も会ったことないんだよな。未だにこんな素晴らしい曲を作っている人と母が親友という事実を信用出来ていない。
「何聞いてんの?またDear horn?」
さっきまで外を見ていた楓が俺のイヤホンを片方外した。
「あ、うん。そうだけど」
「私も聞いていい?」
「別にいいよ。別の聞きたくなったら言ってね」
「別の…ってループしてるの?」
「あ、うん。俺、この曲すげー気に入ってんだ」
この人の曲は沢山ある。でも、俺はこの曲を心を落ち着かせたりする時に聞いている。
「この曲…確か文化祭で歌ってた曲?」
「よく知ってるね」
この曲は確か、喧嘩?した父親を思って作った曲らしい。それを楓の言う通り文化祭で歌った。そして、たまたま記者の人がいて雑誌に載り、話題になった。
耳の聞こえないと母から聞いた時は驚いた。
< 166 / 348 >

この作品をシェア

pagetop