ボトルメール
「最後まで聞いてくれ」
俺が頭を下げていると俊典さんは俺の頭にポンと手を軽く乗せた。
「…え?」
俺はスっと頭をあげると俊典さんは楓の進学を止めた理由を説明してくれた。
「楓は大学からでいいと思うんだ。楓はまだ中学生だし、大学なら専門の知識を得られる。だから、高校は県内のところでいいと思わないかい?」
「あ……それも…そうですね」
俊典さんの言い分は分かる。たしかに、高校で行く必要はない。むしろ多分、芽吹さんにとって楓はいない方が研究を進められると思う。
「じゃあ、楓と彰に言っておいてくれるかい?」
「あ、はい。わかりました」
俺がそう言い告げると、俊典さんは急ぎ足で家を後にした。俺は川口家に 一人取り残されてしまった。とりあえず、彰の方は認めてくれたということか。それにしても楓の方はどうするか…。
「それにしても、あの人…不用心だな」
俊典さんはテーブルの上に鍵を置いていった。おそらく鍵を閉めて、彰か楓に返しておいてくれ、ということだろう。
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