天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない～独占欲に火がついて、とろとろに愛されました～

これはコンビニに寄らず家に帰った方がよさそう。
マンションに向かって走る私を誰かが追ってきて肩を掴まれた。
「茉莉花ちゃん、待って」
この声は氷室先生。
立ち止まって振り返る私に先生が傘を差しかける。
「傘ないの？」
「はい。忘れてしまって」
濡れた髪をかき上げながら答えると、先生は自分が着ていた紺のジャケットを脱いで私にかけようとする。
「一緒に帰ろう」
「いえ、先生まで濡れちゃうからいいですよ。私、すでにずぶ濡れですし。ジャケットだって濡れます」
「いいから羽織ってて。下着が透けて見えるから」
氷室先生は私の肩にジャケットをかけたが、彼の言葉を聞いて思わず謝った。
「それは見苦しいものお見せしてすみません。あの、ジャケットは洗って返します」
「いいよ。どうせこの雨なら濡れるから、さあ風邪引かないうちに帰ろう」
氷室先生に背中を押して押され歩き出す。
彼と一緒に帰るのは非常に不本意ではあるが仕方がない。
それに、ここで反論して彼に風邪を引かれては困る。