強情♀と仮面♂の曖昧な関係
「本当に、お前達は面倒くさいなあ」
たまたま呼ばれた救急外来で、翼が話しかけてきた。

「仕方ないじゃない」
この性格は今更どうにもならない。

「話しはしたのか?」
「うん。昨日の夜」

さすがに平日の月から金で診療所に泊まり込むことになればなかなか会えなくなるからと、「しばらく会えない」と電話があった。
本当は、この先どうするつもりなのと聞きたいのに、結局聞けなかった。

「そんな顔していると、子供に泣かれるぞ」
「うるさい」
どうせ私は、子供に泣かれる小児科医です。

気にしていることをわざわざ言わないで欲しい。

「元々宮城先生をリクエストしたの向こうらしくて、大歓迎らしい。町長が見合い話を勧めようとしているって噂もある」
「ふーん」
だから、どうしろって言うのよ。

「お前もついていけば」
「はあぁ?仕事はどうするのよ」
「あっちで一緒に働けば」
「やめて」
そんなことできるわけがない。
第一、公が望まない。

「こら、痴話げんかか」
あ、救命部長。

「仲がいいのはいいことだが、きちんと仕事はしてくれよ」
言いながら、笑ってる。

「もー、部長」
「からかわないでください」
翼と声が重なってしまった。

救命部長も、翼の身近な人たちも、私と翼が付き合っていると思っている。
そう思わせているのは私たち。
でも、時々辛くなるときもある。
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