強情♀と仮面♂の曖昧な関係
バタッ。
大きな音をたて、ノックもなく開いたドア。
立っている公は、不機嫌そう。

黙ってベット横の椅子に座り、
「馬鹿野郎」
絞り出す声。

うれしくて、私から抱きついた。

この温もりをずっと待っていた。
私の本能が公を求めていた。


「ええー」
入ってきた看護師の絶叫。

駆けつけた救命部長も、唖然としてる。

「何してるか、聞いてもいいか?」
動揺しまくりながら、それでも状況を確認しようとする救命部長、さすがです。

しかし、公も落ち着いていた。

「これ、俺の嫁と子供です。お世話になりました」
頭を下げる。

「こ、公」
金魚のように口をパクパクさせて、私は名前を呼んだ。

ダメだよ。
変な噂が立っちゃう。

「あれ、来たんですか?」
いつも通りな翼の声。

「世話になったな」
「ずっと世話しても良いんですけれどね」
「いや、必要ない。もう、手放す気はない」

「・・・」
この会話から1人残されてしまった私。

病室の入り口で唖然としている救命部長と看護師。

きっと、明日には病院中に知れ渡るだろう公と私の関係。
うれしいような、恥ずかしいような・・・でも、幸せな気分。
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