S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「女性としてって意味」
「八歳も年下だぞ」
おいおい勘弁してくれと、ため息交じりに返した。
「八歳なんて年齢差のうちに入らないだろ。同居をはじめたばかりの頃ならともかく、二十四歳は十分大人だ」
法学部と医学部で学部こそ違うが、大学で同じサークルに入っていた朋久と雅史の付き合いは長い。マンションに住まわせるようになったときから菜乃花を知っている雅史は、たまに会うからこそその変化がよくわかるのだろう。
その雅史に突っ込まれ、菜乃花を瞼に浮かべる。
つい最近まで子どもっぽかったが、たしかに社会人になってからの菜乃花は色気を感じさせるときが少なからずある。お風呂上りだったり寝起きのぼんやりしたときだったり、ふとした瞬間に過ぎず、朋久のほうもすぐに忘れてしまう程度ではあるが。
「……言われてみれば二十四歳は大人だな」
そういえば昨夜も……。
リビングのソファで寝こけていた朋久を起こしにきた、菜乃花の艶っぽい唇を思い出した。不覚にも鼓動が乱れたため、慌てて頭を振り彼女の顔を追い出す。