S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

顔についたクリームを舐められたくらいで動揺したのを悟られたくない。強気に言い返したが、ちょっと可愛げがなかったかなとすぐに後悔する。今さらだ。


「いや、平気じゃなかった。相当甘いな」


朋久が不快感をあらわにする。

あれはたしか小学生の頃。菜乃花は小分けになった数十円の小さなチョコレートが大好きで、それを知る朋久が買ってきてくれることがよくあった。いろんなフレーバーがあるそれをうれしそうに食べる菜乃花を見て、ひとつ口に入れた朋久は『甘過ぎ』と顔をしかめたものだ。


「そんなの毎日食べてたら太るぞ」
「朋くん、女の子には〝少し太るくらいがちょうどいい〟って言うのが優しさだよ?」


菜乃花自身、最近ウエスト回りが気になっているため、耳にとても痛い。


「肥満にブレーキがかからなくなって病気になっても優しさなのか?」
「それは極論でしょう?」


たしかにそうなると優しさではないが、菜乃花も素直に認められない。
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