グレーな彼女と僕のブルー
「蓮田さんは先に僕の玄関先でボヤを見つけて、それを消したことも言ったんですよね?」

「刑事に? 言ったわよ。脅されてると思ってそれで家を空けたって」

「……そうですか」

 ということは、つまり。

 あの刑事は聞き込みをした結果、そのボヤを起こしたのが紗里だと特定したけれど、紗里が起こした火が原因で火事になったんじゃないということは充分に把握していたわけだ。

 ならば共犯とか、やはりそういうセンで疑われているということか?

 そもそも僕の玄関先でボヤを起こしたのだから、共犯という説もいまいち弱いような気がするけど……。

「今の内容で大丈夫だった?」

 蓮田さんが不安そうに首を傾げた。

「その従姉弟の子。助けられる?」

「……あ、はい。充分です」

 ありがとうございました、と言って深々と頭を下げた。

「けど、何でその彼女はキミの玄関先で傘なんて燃やしたんだろうね?」

 蓮田さんはどこか困ったような笑顔で率直に尋ねた。

「……まぁ。変わったやつなんで。僕にイタズラしてやろうって、そう思ったんだと思います」

 正直、ちゃんとした説明にはならないと分かっていたが、僕はそう言って誤魔化した。まさか蓮田さんの危機を回避するために起こした行動だなんて、言えるはずがなかった。

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