グレーな彼女と僕のブルー
 とにかく受付で話をしようと考えていた。

 昨日、紗里の家を訪れた担当刑事の名前は分からなかったが、一ヶ月前のあの火事を担当した刑事と言えば話が通じるんじゃないかと思った。

 あの担当刑事を呼び出すことができたら、紗里に何を確認するために任意を求めたのか聞こうと決めていた。

 紗里は実際に、放火には関わっていないと強く言えば、あの刑事になら理解してもらえると思った。

 僕が近付いたからか、受付に座っているおじさんと目が合った。「あの」とか細い声を出したとき、ポケットの中のスマホが鳴った。

 ラインの通知音だと察して一度立ち止まる。受付のおじさんに、すみませんの意味を込めて会釈をした。

 届いたのは紗里からのメッセージだった。

【ごめんね。こっちで用事を片付けたら帰るつもりだったの】

【午後には帰れるから】

 ……用事?

 用事ってなんだ?

 眉をひそめて考えたところで、またアレかもしれないと思い至る。

 紗里のことだから、また準備予知なんじゃ……?

 画面の右上をチラ見して、げ、と顔をしかめるが。僕は黄緑色の受話器のアイコンをタップし、紗里に電話をかけることにした。
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