グレーな彼女と僕のブルー
 シャワーで洗髪している間も湯船に浸かっている間も、絶えず紗里のことを考えてしまい、イライラした。

 グレーの瞳を細めて笑うあの表情が、脳裏にこびりついて離れない。

 紗里の表情(かお)を思い出して憂鬱なのか戸惑いなのか分からない感情が、モヤモヤと肺のあたりで渦を巻いていた。

「……だいたいあの目が悪いんだ。なんでグレーなんだよ」

 バスタオルで気持ち程度の水気を吸い取り、嘆息とともに独りごちた。

 脱衣所の戸を開けた時、すぐそばに大和が立っていてビクッと肩先が震えた。

「や、大和……風呂か?」

 パジャマ姿の大和はううんと首を振り、「もう入った」と答える。

「あのさ、恭ちゃん」

「ん、うん?」

 何か言いたそうに口をもごもごさせるので、何だろうと不思議に思い首を傾げた。

「紗里の目には理由があるんだ」

「……え?」

 そう言ったきり、おやすみと言って大和は二階への階段を駆け上っていった。

 ……"理由"?

 カラコンを入れなければいけない理由ってなんだよ?

 考えたところで分からず、ただ眉間にシワを寄せるだけだった。

 ***
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