グレーな彼女と僕のブルー
『あるよ。ママの怒りもにぶんのいち、怒られるショックもにぶんのいち、半分になるでしょう?』

『……そっか。サリーちゃん頭いい〜!』

 えへへとあどけなく笑い合い、僕たちは床の破片を慎重に集め始めた。

『あたしと恭ちゃんは運命共同体だからね!』

 聞き慣れないワードに僕は首を傾げた。

『うんめい共同体……? なにそれ』

『嬉しいことも悲しいことも、それから怖ーいことも、ふたりでいっしょに分かち合うってことだよ』

『わかちあう……?』

『いっしょにわけっこしたり二倍に増やすってこと。きっと楽しいよ!』

『うん! そうだね、楽しいね!』

 幼い頃に見ていた遠い記憶。少年も少女も純粋無垢な笑みで笑い合っていた。

 パステルカラーで彩色された映像が、やがて薄れおぼろげに消えていく。

 まぶたを持ち上げたとき、「運命共同体……」と独りごちていた。

 目覚めとともに夢がデリートされなかったのは、頭の中にくっきりとした輪郭を描いて保存していたからだろう。

 奥底にしまった記憶のファイルがゆっくりと蓋を開けた。

 夢で知らされて、確かにそんな会話をした覚えがあると思い出していた。
< 91 / 211 >

この作品をシェア

pagetop