あの物語の人魚のように
生きる 生きる それはなに?
年々消えゆく瞳(こころ)のハイライト
操作しなれた声のトーンに、滑稽なほど気付かれないはりぼての笑み
良いよ それは自分が望んだこと
でも いつまで続くのかな


ひどいこと言ってる自覚はある?
そんなこと口にはしない
どんな毒をはこうと相手は人間
少し牙を向いて 傷つかれては堪らない
だって それをみて自分が傷つきたくはないから
私はただ、口をつぐむ


いっそ、あの物語の人魚のように、誰かに声を奪われてしまえれば良かったのに
気持ちを口にすること それは諦めることじゃなく、出来ないことだと納得できた


自我を持ってから、少しずつ毒に侵されてきた私のこころ
誰にも言わないほんとの気持ち
お腹にどっぷりとたまるそれはどこにいくのかな?
そんなの決まってる どこにもいきやしない
時が経って腐っても 消えることはない
たまりにたまって、ろくでもない爆発しないと良いけど
誰にも傷ついて欲しくはないから
これ以上、自分を傷つけたくはないから


私だって知っている
コミュニケーションの一環でしかない時があることを
悪意じゃない時、その逆の気持ちからうまれる言葉があることを
それでも頭と心は一致しないものでしょ?
意味がないただの音も 冗談も 
心配や約束さえも形を変えて、私には濃度の高い毒となる


家族もいるし、友達だってたくさんいる
みんなだーい好き
生まれたくなかったとも、死にたいとも思わない
ただ消えたいだけ
幸せと苦しさの比率は3.5対6.5
ちょっと疲れためんどくさいな もう良いや


痛いのも、居なくなって悲しまれるのも私はいや
わがままだから
あの物語の人魚のように、誰にも知られずひっそりと泡になって消えたい
生きているのはあと数年 ううんあと数日で良い
でもきっと来月も私は生きている
楽しい嬉しい苦しい次はあれをしよう明日はあの話をしよう
そんなことを繰り返して、結局はまだ存在していたい気だってするのだから


自分の良いところ ちゃんとあげられる
でも何でかな、自分を肯定出来ないの
関心を向けられなくても大丈夫なのに、どんなクズが相手でも嫌われたくはない
誰にどんな影響でも与えたくない
だから何かを任されたり、意見を話したりするのはちょっと苦手


他の世界を夢に見て、恋に落ちたあの物語の人魚のように、いつか私にも現れる?
運命のひとってやつ
その人も私に望むかな 生きていて欲しいって
私の心はきっと、歓喜するんだろう
望まれた 肯定された
あぁ嬉しい


その裏側で、私は猫のように隠れて、また泣くのだろう
だって消えたいことに、意味はない
ただもう十分楽しかった もう良いかな
そう思うだけ
大切な人とすごしてて
幸せ、幸せ、そしてどこか満たされなくて苦しい


運命のひとも例外なく、真綿となって、じわじわと私の首を絞めるのかな
また消えられない理由が増えた
幸せで幸せで どこか哀しい人生
私の終わりはいつだろう
指折り数えてみても、答えは出ない
ため息は宙に溶けた

私は土でなく、海に還りたい
深く冷たくきれいな海は、嬉しいも楽しいも空しいも、空虚なため息でさえも、全て受け止めて寄り添ってくれる気がする
そんなものはただの願望だけど、次に生まれ変わることがあるのなら、あの物語の、感情を持たないたった一ページの紙になりたい


私はまだ、心から笑えるよ
病んでいたなら、逆に考えなくて良くて楽だったかもしれないけど
ちゃんと今も楽しいよ
実はね、あの物語のラストは二種類あるの
ハッピーエンドだってあるんだよ
悪いタコのおばさんはやっつけて 王子様と結婚して
幸せそうだった


私の瞳(こころ)にもいつか、ハイライトが戻るかもしれない
世界が、常に美しく見える時が またやって来るかもしれない
そう思えてる今は まだ大丈夫
私はまだ頑張れるよ
理由のない痛みを抱えてるのは、私だけじゃないことを知っているから
まだ 頑張れる
さぁ明日も1日頑張ろう
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