タツナミソウ
終電がなくなってしまう前に帰らなくてはと思い、急いで準備を始めた。

「長居してごめんね。ありがとう。」

「、、ん。大丈夫。送ってくよ。」

「え!大丈夫だよ。道わかるし。」

翔平は私のいう事なんて無視をして、クローゼットの奥の方から薄手のパーカーを取り出した。それを私の前に突き出し「ん。」と呟いた。
受け取らない選択肢は与えられなくて、私はその袖から手が出ないパーカーを着て、翔平の家を出た。

翔平のパカパカという寒そうな足音だけが響いている、10分間だった。

駅に着き、改札の手前でさよならをした。改札を通り、ホームまでに向かう道。翔平は私の姿が見えなくなるまでそこに居てくれた。と思う。あたしは振り返る事なく終電に乗り込んだ。

ちょうど良い揺れと心地の良い匂いに包まれて、うとうとして瞼を閉じてしまった。
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