タツナミソウ
勘違いしているだろうなとは感じていたけれど、あながち間違いでもないし?そのままでもいいのかなと思って放置した。

着替えて更衣室のの扉を開けると、翔平も出てきた。舞は気を利かせたのだろう。「トイレ行ってこよ〜。ふふ」と言って、口笛を吹きながらスキップでいなくなった。ちょっとと舞の肩を掴もうとしたがもう時すでに遅し。あれ?ちょっと今頭いい感じだったんじゃない?私。それが顔に出ているのだろうか隣から凄い視線を感じる。同じ所に向かうのに話さないのも変だから、たわいもない世間話をした。胸の鼓動を押し出すようにずっと口を開いていた。

作業中も、きっとニヤニヤしているのであろう舞を横目に感じながら苺をカットしていた。翔平は私の半割にした苺を1つ取って、顔に近づけて、じーっと見ながら言った。

「幸子さんの切った苺って、なんか全部綺麗じゃないすか?俺のなんて、なんか太ってたり、薄っぺらかったりで、なんか揃ってないんですよね。あ、綺麗なのばっか選んで使ってるんですか??」

「ん〜。別に使ってるのは、翔平君と同じ苺だけどね。どこから見ても綺麗なのもあれば、そうでないのもあるし」

「じゃあ、なんでそんなに全部綺麗なのばっかなんですか?半割にした瞬間綺麗なのばっかだし」

「前も言ったと思うんだけどさ、少しでも綺麗な状態でお客様に提供したいのね?だから、この苺の魅力をどうしたら引き出せるのかを考えてやっていけば自然とこうなると思うよ」

平べったい苺を半割にカットして、翔平に見せた。「んー。あんましわかんないなー」と言いながら悩んでいる翔平を見て、なんだか可愛いなと思った。

「簡単に言うとさ、ぷっくりする様に切ったら可愛くない??ほら。私のほっぺのようにさ!」

冗談混じりで、マスクの上から自分の頬を人差し指で指しながら言った。正直、いつもみたいに「はいはい」と流されるか、馬鹿にされるだろうなと思い言ったつもりだった。

「あー。そう思うとできる気がする。たしかに可愛いよな」

予想していた反応とは違って、どうすれば良いかわからなくてどこを見たらいいかわからなくなった。
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