タツナミソウ
現実でも伸ばしていた手の下が冷たく濡れていた。
私、また泣いてしまったんだ。

亮太と会ってからは、あの夢を見ても泣いていなかったのに。こんなはじめてのよくわからない夢だったからかな。亮太どこにいったんだろう。とベットから出てリビングへの扉を開けた。

見なくてもわかった。お味噌汁いい匂いと、ジュージュー踊っていらであろうソーセージの音が部屋中に漂っていた。

「りょ、、うた?」

ぼやけて見えた彼のその後ろ姿をずっと眺めていられたら。そう思った。だからだろうか。涙が出てしまった。せっかく亮太と一緒にいるのに、さっきから泣いてばかりな自分が嫌になった。

「んー?他に誰がいるの?なした?」

亮太が後ろを振り返り、子供の様な笑顔でこっちを見た。泣いているのがバレない様に、あくびのフリをして目を擦った。
ぷはっと、笑いながら「あんなに寝たのにまだ眠いの?」そういう彼に「ごめんごめん。なに?作ってくれたの?」近寄ってそう返した。

「いただきます。」

2人で手を合わせてそう言えることだけで嬉しかった。ちょっと焦げたソーセージと、味のしない卵焼き。硬めのご飯。ぜんぶぜんぶ、とっても美味しかった。
でも、お味噌汁を食べた瞬間、時が止まった。

「これ、、、。」

それは、小学生の時食べた、一般的にはお世辞でも美味しいとは言えないけど、あの時世界で1番美味しいと思った味だったから。

「あー。ごめん。沸騰させちゃったんだよね。美味しくない、、よね?」

ううん。世界で1番美味しいよ。

「ふふっ。めっちゃしょっぱい。」

そう嘘をついた。でも悲しんでいる亮太を見て、「ごめんごめん。作ってくれた事が嬉しいの。ありがとう。」とすぐに訂正した。

こんなに幸せな朝ごはんははじめてで、どうしたらいいのか分からなくて、胸がくすぐったくなった。

「でもさ、あんなにできなかったのになんでできるようになったの?」

「あぁ!料理はね、深澤君に教えてもらったんだ!!」

そう、男は胃袋で掴むのよ。とよく聞く話。だから、高校生になった時に頑張らなきゃなとは思っていたけど、お母さんは教えてくれなくて悩んでいた。
その時に、1年生の時に同じだった深澤君と仲良くなって、色々教えてもらった。深澤君の家は定食屋さんで小さい頃から料理はやっていたらしい。昔も今もお世話になりっぱなしだ。

「ふーん。そうなんだ。」

唇を突き出しながら彼は言った。

あれ?たぶん、、。今嫉妬してる?しちゃってる?そんな彼が可愛くて、愛おしくて、やっぱり亮太が好きだなって心の底から思った。
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