タツナミソウ
言い終わると、舞は4つ目の卵焼きを食べ始めてハムスターのような顔で沢山涙を流した。枯れてシワシワのおばあちゃんになっちゃうくらい。その辺に海ができちゃうくらい。

私の中の筆洗バケツは真っ黒になっていた。いろんな色が混じり合いすぎて、全部が合わさってこの色になってしまったんだと思う。本当だったら、汚いとか早く替えなよとかいわれちゃう色なのかな?でも、私にはとても居心地がいい色に見えた。だって、今まで何の色もついてなくて透明で空っぽになる事も溢れるほどいっぱいになる事も何もできなかった。それなのに翔平君に会ってから、私のバケツは大忙しだ。このとっても真っ黒なバケツがあったかくて大好きだ。

「よし!今日はいっぱい食べていっぱい飲もう!」

そう言って、舞の頭を撫でて深澤君に何でもいいから、とにかくいっぱい料理を作ってと頼んだ。真っ赤な目を拭って上目遣いでこちらを見た舞は「おごり?」か細い可愛い声で言ってきたから、首を縦に振った。するとさっき泣いていたのが嘘だったかのように笑顔になって、メニュー表とにらめっこし出した。とりあえずまた、ハイボールを頼んだ。水分補給らしい。

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