タツナミソウ

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「きゃーーーーーー。」

誰かの叫び声が廊下から聞こえてきた。高校に入ってはじめての学校祭の準備時間。真面目に作業をしている人もいれば、おちゃらけている男子とか、自分のメガホンを作っている女子とかもいる。私は真面目に衣装を作っていてミシンを使っていた。みんなが「なになに。」等と言いながら廊下に出たから、私も気になって、ミシンを止めて、めぐみと一緒に廊下に出た。
同じクラスの深澤君と宮下君が殴り合いの喧嘩をしていた。最初から見ていた子によると、2人が何かで揉めて深澤君が宮下君の携帯を取って、それを取り返そうとした宮下君が最初に深澤君の肩を押したらしい。それでも携帯を返さないで、何か操作している深澤君から無理矢理奪い返そうとして、宮下君が深澤君を殴って「こんなやつので怒るなよ。」と言ったらしい。その瞬間に深澤君が宮下に殴りかかって今に至る。話し声はその一言しか聞こえてこなかったという。
何で揉めていたのかはわからないけど、2人ともそんなにすぐ手が出ちゃう怖い人達だったんだ。深澤君はいい人だと思っていたから、すこしガッカリした。
2人は先生達に連れて行かれて、みんな作業に戻った。隣にいたはずのめぐみの姿がいつのまにか無くなっていた。まあ、めぐみのことだから興味本位でこっそりあの2人について行ったりしているのだろう。私は教室に戻りミシンの前に座って、また衣装を縫い始めた。しばらくすると、亮太が教室に来て私の隣に来た。

「さっき、なんかあったんだってな?幸子、大丈夫だった?」

左手を机に右手を私の座っている椅子について、顔を近づけて来た。

「大丈夫だよ。私には関係のない事だったし。」

この距離が恥ずかしくて、亮太の顔が見れなかった。だから、ずっと右下を向いていた。頷きながら「ふーん。」という亮太が離れていくのがわかって、亮太の世界に入りたくて必死に目で訴えかけた。
廊下からドタドタと騒がしい足音が聞こえてきた。教室のドアを豪快に開けて、めぐみが真っ赤な顔をして現れた。

「ねえ、さっきの喧嘩!幸子が関わってるんだってよ!」

「え、、、?なんで私?」

後ろからも亮太が不安そうな顔をしてめぐみの肩を叩いた。はっとした顔をして、あなたはいたらダメな人と言って、めぐみは亮太を教室から追い出した。そしてめぐみは、その辺でメガホンを作っている女子達にミシンを任せて、誰にも聞こえないように教室の端っこに座って話し始めた。
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