恋の誘導尋問~恋に不器用な先輩に捕われたい~
なぜか澄司さんは喜びながら、ふたたび私の頭に頬を擦りつける。
「酷いなこりゃ。松尾さん、改めて説明すると、坊ちゃんがこれまで付き合ってきた女性が、御曹司の坊ちゃんに気に入られようと、どんなことでも言うことを聞いたりして、坊ちゃんを甘やかすように特別扱いしていたんです。こんなふうにきちんと拒否する女性は、ひとりもいなくて」
(――だからって澄司さんのこの態度は、明らかにおかしいものだと思う!)
抱きつく澄司さんを白い目で見ているというのに、頬を紅潮させて嬉しそうに微笑みまくる姿に、ドン引きするしかない。傍で見ている刑事さんも、顔を引きつらせていた。
「坊ちゃん、よだれを垂らさないようにしないと」
「えっ、ヨダレ!?」
その言葉で慌てて澄司さんがくっついてる頭を避けつつ、体を捻って接触する部分を守った。
「笑美さんそれ冗談ですよ。僕がそんな…じゅる…よだれなんて垂らしてマーキングするように」
「見えます、お願いだから抱きつかないで!」
「坊ちゃん話が進まないんで、自重してもらえます?」
手を叩いてその場の雰囲気を引き締めてくれた刑事さんのおかげで、私と澄司さんの距離が自然とあけられた。
「松尾さんに聞きたいことがあります。誰かに恨まれる覚えはないですか?」
「恨まれる……。誰かにと言われましても」
頭の中に、たくさんの人物が流れた。佐々木先輩と付き合ったことで、梅本さんとそのグループに目をつけられている。もしかしたら、私たちの付き合いを快く思っていない人が、他にいるかもしれない。
「僕が笑美さんに執着しているのを気に入らない女のコがいて、恨む可能性だってあるよね」
「その線はもうチェック済みですよ。お金持ちの令嬢さんたちは気性が激しいから、なにをするかわかりませんからね」
(怖すぎる。いったい私は誰に恨まれているんだろう。澄司さん絡みを考えただけで、両手じゃ足りない気がする)
「松尾さんの元彼、安井弘明宅の郵便ポストに、松尾さんの住所と行動時間がプリントされた紙が、数日前に投函されていたんです。それを見て、ナイフを持参しつつ乗り込んだようでして。抵抗したらナイフで脅すだけで、刺すつもり…つまり殺意はなかったと否認している状況です」
「元彼さん、笑美さんに戻ってきて欲しかったんだね。そこまでするなんて、最低だと思うけど」
弘明以上に最低なことをしている澄司さんに、こういうことを言われている元彼を哀れに思った。
「松尾さん、被害届出しますか?」
そのときのことを思い出して気落ちしている私に、刑事さんが言いにくそうに訊ねた。
「被害届は出しませんが、ストーカー規制法について、いろいろ相談したいです!」
迷うことはなかった。弘明が私に近づけないように、法律で守ってもらうべく手続きをお願いする。
「笑美さん、安心してください。僕が笑美さんを守ります」
言いながら手を握られてしまったけれど、刑事さんの説明を聞くために、そのまま放置した。スルーしたのがよかったのか、澄司さんは抱きついたりと派手な接触をしてこなかったので、刑事さんと安心してやり取りすることができたのだった。
「酷いなこりゃ。松尾さん、改めて説明すると、坊ちゃんがこれまで付き合ってきた女性が、御曹司の坊ちゃんに気に入られようと、どんなことでも言うことを聞いたりして、坊ちゃんを甘やかすように特別扱いしていたんです。こんなふうにきちんと拒否する女性は、ひとりもいなくて」
(――だからって澄司さんのこの態度は、明らかにおかしいものだと思う!)
抱きつく澄司さんを白い目で見ているというのに、頬を紅潮させて嬉しそうに微笑みまくる姿に、ドン引きするしかない。傍で見ている刑事さんも、顔を引きつらせていた。
「坊ちゃん、よだれを垂らさないようにしないと」
「えっ、ヨダレ!?」
その言葉で慌てて澄司さんがくっついてる頭を避けつつ、体を捻って接触する部分を守った。
「笑美さんそれ冗談ですよ。僕がそんな…じゅる…よだれなんて垂らしてマーキングするように」
「見えます、お願いだから抱きつかないで!」
「坊ちゃん話が進まないんで、自重してもらえます?」
手を叩いてその場の雰囲気を引き締めてくれた刑事さんのおかげで、私と澄司さんの距離が自然とあけられた。
「松尾さんに聞きたいことがあります。誰かに恨まれる覚えはないですか?」
「恨まれる……。誰かにと言われましても」
頭の中に、たくさんの人物が流れた。佐々木先輩と付き合ったことで、梅本さんとそのグループに目をつけられている。もしかしたら、私たちの付き合いを快く思っていない人が、他にいるかもしれない。
「僕が笑美さんに執着しているのを気に入らない女のコがいて、恨む可能性だってあるよね」
「その線はもうチェック済みですよ。お金持ちの令嬢さんたちは気性が激しいから、なにをするかわかりませんからね」
(怖すぎる。いったい私は誰に恨まれているんだろう。澄司さん絡みを考えただけで、両手じゃ足りない気がする)
「松尾さんの元彼、安井弘明宅の郵便ポストに、松尾さんの住所と行動時間がプリントされた紙が、数日前に投函されていたんです。それを見て、ナイフを持参しつつ乗り込んだようでして。抵抗したらナイフで脅すだけで、刺すつもり…つまり殺意はなかったと否認している状況です」
「元彼さん、笑美さんに戻ってきて欲しかったんだね。そこまでするなんて、最低だと思うけど」
弘明以上に最低なことをしている澄司さんに、こういうことを言われている元彼を哀れに思った。
「松尾さん、被害届出しますか?」
そのときのことを思い出して気落ちしている私に、刑事さんが言いにくそうに訊ねた。
「被害届は出しませんが、ストーカー規制法について、いろいろ相談したいです!」
迷うことはなかった。弘明が私に近づけないように、法律で守ってもらうべく手続きをお願いする。
「笑美さん、安心してください。僕が笑美さんを守ります」
言いながら手を握られてしまったけれど、刑事さんの説明を聞くために、そのまま放置した。スルーしたのがよかったのか、澄司さんは抱きついたりと派手な接触をしてこなかったので、刑事さんと安心してやり取りすることができたのだった。