可愛い幼なじみの求愛


ガヤガヤと喋り声が聞こえる教室。




私のクラスは5組あるうちの1組だ。




楓くんは5組。




「風菜〜、今日ギリギリだったね」




私にそう話しかけてくるのは友達の、咲。




咲も私と同じ図書委員。




「ちょっとね、忘れてて」




「珍しいね。あの真面目な風菜が図書委員忘れるなんて」




咲が私の肩をツンツンと、指で押してくる。




楓くんの朝ご飯を食べて、家を飛び出した私はギリギリ会議に間に合った。




いつもは余裕を持って家をでるんだけどね……。



「色々あって」




「色々って?」




目をぱちぱちとまばたきをしている咲。




「色々……だよね」




私は一瞬、咲に言おうと思ったけど、どういう風に言ったらいいのか分からなかった。




昨日は色んなことが重なったから。




「風菜〜、教えてよ」




私の体を揺さぶってくる咲。




「いつかね」




『なんで〜!』と咲が嘆いていると、



「キャー!!」




「可愛いー!!」




急に女子の悲鳴の様な声が聞こえた。




だけど、そこには『かわいい』などの言葉も含まれていた。




嫌な予感がする……。




その悲鳴のような声がどんどんクラスに近づいてくる。



「なになに?」





クラスも急な悲鳴にざわつく。




「何かあったのかな?」




私がそう咲に聞いた。



すると咲は、




「なんかね、楓くん?がこっちに向かってるらし
いよ」




そう言った。




まさか、私に用があるとか…?




心の中で楓くんが通り過ぎてくれることを必死に願う。




ガラガラっと教室のドアが開いて、教室に顔を出したのは




「風菜〜」



楓くんだった。




これはヤバい……。




額から冷や汗が止まらない。




クラスの皆からの視線が私に集まる。



「ど、どうしたの?」



恐る恐る楓くんに近づく。



すると楓くんは私に手を突き出してきた。



「お弁当、忘れてたよ」



「お弁当…?」



「次からは忘れちゃ駄目だよ」




楓くんはそう言ってた私のクラスから去って行っ
た。



「風菜!あんた、王子と……?」




「お弁当って、王子とどんな関係なの?!」




楓くんが私の席を去ったあとクラスメイト、主に女子に囲まれた。



『王子とどういう関係なのか?』そんな質問を皆に一気にされる。



「えっと……」



どう答えようか悩んでいると学校のチャイムが鳴った。



クラスの女子達がそれぞれの席に戻って行く。



私はホッとしていると、前の席の咲に




「なんで王子が風菜のお弁当を持ってきたの?」



ニタニタしながら聞かれた。




なにを考えているのか。
 


「靴箱の上に忘れてたのを持ってきてくれたんだよ」



「ふ〜ん」




私は一緒に住んでいるなんて言えなくて、とぼけた。




だって、これは親友にも言えない秘密の同居だから。


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