魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
18.あなたを忘れさせて
 トラヴィスが初めてレインと出会ったのは、彼女が四歳、つまりトラヴィスが十六歳のときだった。十六歳のトラヴィスはまだ学園の生徒。そして、どちらかというと落ちこぼれの生徒。
 今では毒舌を吐き合う仲となっているライトであるが、その当時はただの同じクラスの人、という認識だった。
 さらに、十六歳のトラヴィスは容姿も今と異なっていて、色白でぼちゃっとした体型。そんな体型、珍しくもなんともなく、学園の十人に一人くらいは男女問わずそんな体型なような気がしていた。成長期なんだから、皆が皆、すらっとしているわけではない。
 ただ、落ちこぼれでそんな体型であると、からかいの対象になりやすい。そして、当時のトラヴィスはそんなに強い心を持ち合わせていたわけでもない。
 学園の授業が終わった放課後、学園の建物の裏で一人魔法の練習をしていた。するとライトと手を繋いだレインがやって来たのだ。恐らく、父親を訪ねてきたのだろう。
 じーっとレインはこちらを見つめていた。そして「きれいねー」と、ため息とともにそんな言葉を吐いたような気がする。するとライトが優しい表情で。

「こいつは努力家だからな。それが、魔法にも表れている」
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