魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
29.親バカって言うらしいですよ
 扉をノックすると、中から「はい」という細い声が聞こえた。どうやら起きていたらしい。

「具合はどうだ? ニコラさんがレインに会いたいと言っていたから、連れてきたのだが」

「レインちゃん」

「お久しぶりです、お母様」

「あら、まあ。こんなに痩せちゃって」
 ニコラは優しくレインの頬に手を当てた。その様子を見ていたトラヴィスはそっと部屋を出る。たまには母娘水入らずというのも悪くはないだろう。

「ご飯は、あまり食べられていないようね」

「はい。その、気持ち悪くて」

「お水は? 飲めてるのかしら?」

「少しずつなら」
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