魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
4.言葉を聞いて
 レインが言っていた祖母とは、彼女の母方の祖母だ。多分、薬師をしていると言っていたような気がする。

 レインは魔力が無くなった今、薬師の修行をして、それらの知識をこちらに持ち帰ってきたい、という話をしていた。魔導士と薬師の関係も切っても切れない関係であるから、彼女が薬師の知識を得て、またこちらに戻ってくるということは、今後の魔法研究における発展の足掛かりにもなるだろう。そういった発想ができる妹を、ライトは誇りに思う。
 薬師というのは、その材料の入手性の関係からか、地方にいる者が多く、その知識が王都にまではなかなか広がってこない。
 そう考えると、彼女がこの家を出るというのも前向きにとらえられることもできる。何しろ彼女はまだ十七だ。本来であれば、まだ勉学に励んでいる年齢だ。魔導士になるために薬師の勉強をするのもいいだろうし、そのまま薬師という職業を選んでもいいだろう、とライトは思った。彼女の人生は彼女のものだ。

 ライトは研究所の方を、数日休みをとった。レインを、その祖母の元まで送り届けるために。魔力の無い彼女を一人で移動させるには、少し心配だった。
 妹は「最後までお兄様の手を煩わせてしまい、申し訳ありません」と、呟いていた。
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