さくらいろ

スーツ



「・・・似合わねー」


思わずそんな言葉がもれる。




鏡の前にいるのは、真新しいスーツをきた自分。



“スーツに着られてる”

そういってゲラゲラと笑う母の声が、今は少しだけ懐かしい。



からっぽのクローゼットの前

つみあげられたままの段ボール箱


その上においていたカバンをつかむ。




「・・・ここが、俺の部屋」



春の日差しが暖かい。








今日は大学の入学式だ。
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