私達は結婚したのでもう手遅れです!
俺に武士の母の答えはいらない。
ふっと笑って、髪に口づけると羽花がよけいに顔を赤くした。

「冬悟さん、お弁当食べましょうか!」

「ああ」

いや、ひとつだけ悩みがあったな。
ハート型がないということ。
弁当箱を見て思い出してしまった。

「今日はちょっと頑張ったんですよ」

羽花は嬉しそうな顔で弁当箱の蓋を開けた。
蓋開けたそこにはハート型の卵焼きがあった。

「ハート……」

『愛する人へのメッセージ』という言葉が思い浮かんだ。

「だ、だめでした?あの、たまにはこういうのいいかなって思って」

「いや。いい」

「そうですか。よかった」

「これは羽花が食べさせてくれるんだろう?」

かぁっーと羽花は茹でダコみたいに顔を赤くした。

「あーんってやるんですか?」

「だめか?」

「いえっ!僭越ながら、やらせていただきますっ!」

恭しく羽花は言った。
俺はスッと箸を差し出す。
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